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2024 .09 .28

スコレーの食物語 [vol1.お米編] ――ひとと大地と。感謝のお米

スコレーで食べるお米は、スコレーに関わってくれているみんなの力、そして自然の恵みの力で、農薬・化学肥料・動物性堆肥を使わずに育てています。

2023年の春に開校した「竹林のスコレー」は、子どもたちが自らの意思で必要なことを学びとることができる、自然豊かな環境を探して、今の場所に出会いました。


スコレーの田んぼがあるのは校舎の麓。2018年の西日本豪雨で水没したことをきっかけに耕作放棄地となってしまった場所です。


初めて訪れた時は荒れ果てた姿で、もともと田んぼだったとは思えないような状況でした。でも、何年も手つかずの土地だからこそ、土が力を持っているはず。


「この土地を再生し、スコレーで食べるお米を自分たちで作ろう!」


そう決意したのは2022年の秋。そこからは怒涛の日々でした。


あの日の豪雨とともに流れ込んだ土砂や瓦礫を取り除き、人の2倍の背丈もあるような草を刈り、水を守るための畔(あぜ)を作りなおし……やるべきことは無数にあります。

自然の力を活かした田んぼづくり

不安を抱えながらも、たくさんの心強い仲間たちの力を得て、田んぼづくりは始まりました。

開校に向けて、スコレー校舎となる古民家とその周辺の整備と同時並行の作業です。

左から、金子さん、中島さん、あきらさん、てっちゃん。 石原農園さんにご指導いただき、そがっちも大活躍! NPO法人彩(IRODORI)さん、ボランティアさんなど、たくさんの方が手伝ってくれました!

作業を始めてみると、もとの田んぼの姿は大きくくずれていて、大きな石や瓦礫を運ぶのも想像以上に大変。工業機械の会社を経営している金子さんに機械と知恵をお貸りし、桃農家の中島さんに重機の操作をしてもらいました。


土を水平にならし、稲を植えられるような状態にするまでは、クワやトンボを使って、人力で行いました。
日本古来の稲作農法。機械は使いませんが、その分人の力が必要です。強力な助っ人たちの力を借りてこそできたこと。

おかげさまで、どんどん田んぼらしさを取り戻していきました。

たくさんあった、もぐらの穴も埋めて、田んぼに水が張ったころには、大人たちは筋肉ムキムキに 。

常識の範囲を超えて人力で作業する様子を見ていたスコレースタッフ・トミーの頭には、ドラゴンボール超の主題歌「限界突破×サバイバー」が流れていたそうです……


一方、子どもたちは、水を張った田んぼを楽しみながら土を耕す、一石二鳥のイベントを企画。

「田んぼで運動会」です! 

プログラムもルールも子どもたちで決めました。

綱引きにしっぽとり、手作りパンのパン食い競争にと、子どもたちは泥んこになりながら大笑いで大暴れ。

おかげで、田んぼの土はほどよくトロトロにほぐれました。

さあ、田植えの準備は万全です。

念願の田植え!

スコレーの開校から3か月後、西日本豪雨から5年となった2023年7月。


途方もなく長くかかった田んぼづくりの作業を経て、ついに、待ちに待った、田植えの日を迎えました。


ボランティアの方や保護者の方、メディアの方まで、この日はたくさんの人が駆けつけてくれました。
豊作への祈りを捧げる「御田植祭」を行ったあと、応援に来てくださったみなさんといっしょに、いよいよ田植えです。

素足で入る水田はひんやり冷たくていい気持ち。

土と水の感覚を楽しみながら、稲の一本一本に祈りを込めて、子どもたちも小さな手で丁寧に植えていきました。

スコレーのお米の苗は、倉敷で23代続く「石原農園」さんから頂いたものです。

石原農園は、平成元年より 化学肥料や動物性堆肥を使わない自然栽培を家族でされている農家さんで、「こうのさと」のメンバー一同、 長くお世話になっています。

お米は本当にできるのか?

初めてのお米づくり。田植えを終えてほっとしたのもつかの間。
収穫までは、ほんとうにお米ができるのか、心配が尽きません。
自然栽培なので害虫は寄ってこないのですが、苗の様子が気になります。


石原農園のお父さん・カメさんには、田んぼの写真を頻繁に送って、こと細かに指導していただき、現地での作業も一緒にしていただきました。


カメさんからは、「大船農法でいきましょう! 大丈夫! 大船に乗ったつもりでいてください! 泥舟じゃないですよ(笑)」と言葉をもらい、どんなに安心したことか。

息子のかっちゃんには田植えをサポートしてもらい、お母さんのナルミさんにも優しいアドバイスをいただきました。

そんな人間たちの不安もなんのその。

稲は期待どおりにすくすくと育ち、11月には黄金色の稲穂が一面に輝き、とても良い状態で収穫を迎えることができたのです。

子どもたちも鎌を使って、ひと株ずつ、刈り取っていきます。結構大変! 1日では終わりません。

おさるのかごや、ではなく……。 稲を天日干しするための「稲架掛け(はざかけ)」づくりの最中。竹は丈夫ですが、大人たちの肩はつらい!

できたお米を、給食としてみんなでいただくのは大きな喜び。

自分たちでつくったお米の味は格別です!

釜炊きでいただくお米は最高です!

あらたに循環しはじめた、豊かな生態系

田んぼができたことで、周辺の生態系も蘇ってきました。


2年目の春にはたくさんのレンゲやオオイヌノフグリが咲きました。

こういった植物の多くは、天然の肥料「緑肥(りょくひ)」として、持続的な農業の手助けになります。

稲は、水を張った環境で育ちますが、水があることで、稲の周りにはほとんど草が生えてきません。水面の浮き草は、水がきれいな証です。

そんな浮き草の中に、なんと水カマキリを発見!(写真右から二枚目)

水カマキリは農薬に弱いため、一部地域では絶滅危惧種となっている水生昆虫です。

子どもたちは、田植えや草とりをしながら、さまざまな植物や昆虫を発見し、自然や生態系を学んでいます。

2度目となった今年の田植えでは、1年目に経験をしたそうちゃんやのんちゃんたちを中心に、はじめての子に教えてあげる姿も見られています。1年目には入らなかった子が田んぼに入る姿も見られます。

お米にまつわる、「一粒万倍(いちりゅうまんばい)」という言葉があります。

一粒の籾(もみ)から、万倍もの収穫を得ることができる。一方で、わずかなものでも粗末にしてはいけないという言葉でもあります。


たくさんのご縁をいただき、たくさんの人の力を借りながら、みんなの手でつくったお米だからからこそ、一粒の大切さを美味しさとして、より一層かみしめられます。

古くから日本に根付いている稲作。自然栽培を続けていくことによって、人にとっても、生き物にとってもいい農のかたち、暮らしのカタチを感じる事ができます。

今年も、子どもたちとともに、稲は元気に順調に育っています。今年は麹菌がつくといいな…、麹菌がついたらみんなで米麹をつくって、甘酒をつくって…… 夢はどんどん膨らみます。



スコレーでは随時見学を受付けています。「竹林のスコレーが気になる!」「もっと知りたい!」「実際に見てみたい!」そう思っていただけましたら、まずは見学にお越しください。


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