2024 .12 .13
スコレーの食物語 [vol2.鶏編] ――命を頂く。
鶏の卵が届いたのは、竹林のスコレーを開校して間もないころ。
田んぼ作りでもお世話になっている桃農家の中島さんが鶏を飼っているのですが、その卵を18個頂いて、スコレーでも育ててみることになりました。
卵を孵化させるには、21日間、38度を保つ必要があるので、卵孵器(ふらんき)という機械を使います。
「この卵から、本当にヒヨコが生まれるの?」
「卵ぜんぶヒナにかえるかな?」
子どもたちはドキドキワクワクしながら待つ間、卵孵器というこの聞きなれない機械に“フランキー”という名前を付けました。
フランキーにかじりつきながら見守る、短いようで長い1か月。
5月29日の朝いちばん。ついに、卵からヒナが生まれました。
手のひらに乗せると、小さくて、あたたかくて、けど力強い。
その日のうちに、スタッフのもりやんから、子どもたちに、大切なお話しをしました。
鶏の飼育について、そして、生き物にとって良い環境「アニマルウェルフェア」について、動画などを見ながら、スコレーではどうしていくかを考えました。
可愛いヒナたちはすぐに大きくなり、メスは卵を産みます。一般的には、1歳になるころに、雄鶏を食用として捌きます。
これから、みなでお世話をしながら、一緒に考え、学んでいくことになります。
ぐんぐん育つ鶏たち
ピピピ、ピヨピヨ
次の日から、玄関を入ると可愛い鳴き声が聞こえてきます。
気付いた子たちから、ヒヨコの様子を見ながらお世話をしていきます。
ヒヨコたちのお部屋の掃除も子どもたちが率先してやってくれます。
雨が降らないうちにと、天気もチェックして、ダンボールに1羽ずつ移動したら、餌皿や水皿を洗って、新しい籾殻を敷き詰めて…結構大忙しです。
ヒヨコたちはぐんぐん大きくなって、たったの1週間で、親羽が生えてきた子もいます。
さらに、1か月もたつと羽も大きくなって、子どもたちの手から飛んでみたり、餌をあげに行くと、飼育小屋から元気に飛び出してきます。
庭を散歩しながら、草やミミズ、ダンゴムシやアリまでパクリ。食欲も好奇心も旺盛です。
ヒナの時につくった小さな小屋はすぐに手狭になってしまい、校舎のすぐ近くに、色々と工夫を凝らした立派な小屋もつくりました。
事件発生
そんなある日。
スタッフトミーが鶏小屋に餌をあげに行ったら、18羽のうち半分くらいしかいません……
たくさんの羽毛が散らばっていて、見ると、怪我をして弱っていたり、動かなくなっている鶏もいます。
犯人は、イタチでした。
「イタチをやっつけたい!」
「卵を楽しみにしていたのに悲しい」
「怪我した子を看病しないと」
この事件をどのように受け止めるのか、大人も一緒に悩みました。
イタチ事件は、悔しいことに複数回ありました。そのたびに、大人と子どもとで話し合いました。
鶏小屋は強固にし、普段のお世話もしっかりと続けました。
鶏はすっかりなついて、子どもたちが歩いていていると、後ろを付いてきます。
スコレーでは、鶏たちの健康を考えて、餌はみんなで手作りしています。
米ぬかなどをつかって、毎回工夫を加えながら、丁寧につくっています。
おかげで鶏たちは、どんどん大きく、立派になりました。
鶏を捌く日
そろそろだろうか……
子どもたちの様子を見ながら、ついに、鶏を捌く日を決めました。
といっても、これまでにも、中島さんが持ってきてくれた鶏を庭で捌いて、みんなでいただくことはありました。
今回は、改めて、中島さんが手順を説明しながら捌いてくれます。
そしてそれをしっかりと聴きながら見守る。命をいただくための、授業です。
外ではお湯の準備も出来て、だんだんと人が集まってきます。
全員ではなく、見たくない子はお部屋にいて、見たい子だけが集まります。
さっと鶏の首の羽をむしると、小ぶりの出刃庖丁で、あっと言う間に切れ目をいれる。
手を合わせる子もいます。
大人たちは少し心配していました。
特に鶏を可愛がっていたのんちゃん が、怖がってしまったらどうしようかと。
でも、のんちゃんだけでなく、みんな生活のなかの一コマとして、受け入れた様子でした。
上手に羽をむしってくれる子もいます。
捌くのを見ながら、「ここを食べていたんだ!」と知ったり、一羽から二つに一つ しか取れないササミの貴重さを知ったりと、発見がたくさんあります。
捌いた鶏は、新鮮なので刺身で食べるのも美味しい。
お代わりの声も聞こえてきます。
待望の卵
ひなが孵化して7ヶ月半が経つ頃。待ちに待った卵を見つけました。
合計4個の、まるっとした温かい卵。
悩んだ結果、子どもたちは、卵のおいしさだけを味わえるよう、味付けなしの卵焼きを焼いて、14人で分けて食べました。
鶏たちが卵を産んでくれるようになってから、子どもたちはスコレーに着くと、一目散に鶏小屋に駆けつけるようになりました。
スタッフの誕生日祝いでは、サプライズに子どもたちが秘密で手作りオムライスをつくったり、もちろん、日々の給食のなかでも、大切にいただいています。
そして、季節がめぐって春になると、フランキーの出番。
新しく加わったスコレーの仲間たちに見守られながら、次の世代の新たな命がまた、誕生します。
ー ー ー
こんな日々を過ごしている「竹林のスコレー」では、“自然から学ぶ、人から学ぶ、感覚を大切にする”をモットーにしています。
2024年12月の今は、スコレーの周辺にある耕作放棄地を整備して、多世代で交流できる憩いの場を新たにつくるべく、「スコレーパーク」を建設している真っただ中です。
鶏だけでなく、ヤギや羊たちなど少し大きな動物たちとのストーリーも始まりそうな予感。
子どもたちも、動物たちも、成長が楽しみです。
羽ばたけ!子どもたち!!
スコレーでは随時見学を受付けています。「竹林のスコレーが気になる!」「もっと知りたい!」「実際に見てみたい!」そう思っていただけましたら、まずは見学にお越しください。