2025 .02 .22
スコレーの食物語 [vol3.スコレーパーク建設編] ――みんなの力で夢はかなう!

いつも活動をサポートしてくださっている中島さんがある日「ヤギや羊もおったらええなぁ」とつぶやきました。
スコレーに通う子どもたちの中には、糸紡ぎを習い、羊毛でマフラーを作っている子もいます。
確かに、羊がいたら楽しみがさらに広がりそうです。
「スコレーに羊がいたらどうかな?」
スタッフのてっちゃんがそう問いかけたときの子どもたちの輝く表情が、今回のプロジェクトの始まりでした。
羊を飼うには、今のスコレーの敷地だけでは足りません。
しかし、スコレーの周囲には、誰も使っておらず荒地となっている耕作放棄地がある!
竹林のすぐ裏手に広がるその土地を開墾したら、何ができるだろうか?
羊以外にもさまざまな動物を飼育したり、果樹や食べられる花を育ててエディブルガーデンをつくったり。蓮田や水棲植物を整えて、蛍や糸トンボが集まるビオトープも夢ではありません。
収穫した果物でフレッシュなジャムを作り、羊の毛を刈る季節には何を編もうか……夢はどんどん膨らみます。
この場所を、スコレーを利用している子どもたちだけでなく、地域のさまざまな世代の方に解放して、土日には親子で遊びに来れるような場所にできたら、どんなにいいだろうか。
昨年実施した竹灯籠まつりも、ここでなら広々とできる。
土地を管理している地主さんに相談したところ、快く貸していただけることに。
あとは、人手と材料、そして予算があれば実現できます。
子どもたちの成長は待ったなし。やるっきゃない!
こうして、夢が詰まった「スコレーパーク」の建設プロジェクト、略して“スコパプロジェクト”が始まりました。

荒れ果てた大地に、空気の流れをとり戻す
「スコレーパーク(愛称:スコパ)」の建設予定地は、30年以上耕作されていない、竹藪に囲まれた約3,000㎡の荒地です。
田んぼづくりのときのように人力だけでは難しく、ある程度までは重機の力が必要です。
善は急げとクラウドファンディングを実施したところ、目標金額を大きく超えるご支援をいただきました。こんなにも多くの方にご支援いただけるなんて、本当にありがたいことです。
猛スピードで動き始めたスコパプロジェクトですが、土地を均すだけでは不十分。
耕作放棄地に人の手を入れることで、自然が本来あるべき姿を取り戻す手助けをしたい。
その方法を学ぶべく、一般社団法人 杜の財団が開催する「大地の再生」講座に参加しました。そして、スコレーパーク予定地でも「大地の再生」講座を開催していただけることになりました。
「大地の再生」講座では、実際にその土地の自然が持つ条件を注意深く読みながら、自然と人間が一体になって作業をしていきます。
6月には、講師としてまるちゃん(丸尾竜則さん)をお招きして初回講座を実施しました。各地から総勢18名の方が参加してくれました。


実際に間伐を始めてみると、たった1日作業しただけで、鬱蒼とした竹藪に一筋の光が差し込みました。

やればやるだけ水が流れて、光や風が通ります。その音さえも心地よい空間へとどんどん変化していきます。
8月には大型の重機が入り、ジメジメしていた土地が爽やかな空間へと一変。
大地の再生講座を重ねるたびに、景色は見違えるほど変わりました。

「スコレーパーク」ついにお披露目!
この場所を使って、少しずつ、地域の方々との関係を育んでいきたい。
イベントをしやすいように、間伐した竹を使った舞台の制作をしました。

10月には、お披露目イベント「身体ってすごい!演劇・大道芸ワークショップ」を開催することができました。
「あったかファミリー」さんによる演劇や、パフォーマー集団「ASOBIBA」さんによる大道芸と驚きのマジックショーを見た後は、身体を動かす楽しさを体験するワークショップ。

4カ月前までは荒れ地だったこの場所に、子どもたちの声が響き渡ります。

これで一区切り、とはいかないのがスコレー。
実はこのスコパプロジェクトの裏では、もう一つのビックプロジェクトの準備が着々と進んでいました。
それは、なんと1か月後の11月9日(土)に迫っていた「竹灯籠まつり」です。
夢のような景色をつくりたい
スコパ開拓にあたっては、たくさんの竹を間伐してきました。竹は竹炭にし、土を肥やすために田畑に還すことができます。
でもその前に、その竹を美しい「竹灯籠」にして、たくさんの人に楽しんでもらいたい。そして、地域への愛着を感じて欲しい。
そんな思いから、昨年開催した「倉敷ほいだ竹灯籠まつり」を更にバージョンアップして、スコレーパークで開催することにしたのです。
スコレーの子どもたちは、パークに門を作りたい!と、デザインを考えて試作したり、楽しみに準備を進めます。
やわらかな光がキラキラと煌めく夢のような風景を作りたい。
そのために必要なのは、3,000本の竹灯篭――。
間伐・整地作業から一転して、地味な作業。電ノコを使うので、大人たちがひたすらに作業します。
疲れた肩と腰をほぐすどころか追い打ちをかける電ノコの振動。なかなか減らない竹。。。

細かい作業は、ボランティアさんが手伝ってくださいました。
子どもたちも、祭りの最初のプログラム「みんなの発表会」の練習を頑張りながら、できる範囲で手伝ってくれました。
今回、30近くの飲食店や販売店に出店いただくこともあり、灯篭づくりと並行して、警備、誘導、順路の確認もぬかりのないよう、スタッフミーティングを重ねました。
――そして迎えた当日。
3,000本の竹灯籠に美しい光が灯り、まさに夢のような景色が実現。

心地よい竹林の空気の中で味わう芸術的な光の演出に、歓声が上がりました。
つい最近まで荒れ地だった場所とは思えないほどの賑わいです。

そんな中、この日の特別な取り組みとして、駕籠屋(かごや)が出動しました。
医療ケア児とそのご家族の方にも楽しんでもらえるよう、山道をご案内します。

車椅子や胃ろうのケアなどで夜の外出がなかなか難しい方にとっては、「お祭りに家族で出かけるなんて夢のまた夢」なのだそうですが、「日中一時支援Chill」さんと、IPU(環太平洋大学)の学生ボランティアの協力のもとで実現しました。
2024年の「倉敷ほいだ竹灯籠まつり」には、把握しているだけで、1,110名もの方にいらしていただきました。
予想を大きく上回るご来場となり、渋滞が起きてしまい、入場を断念された方、近隣の方などにもご迷惑をおかけしたところもありました。
ふとした一言をきっかけに始まり、たくさんの方に支えてもらって、想いや力が集まったことで実現したイベント。
地域のみなさんとともに楽しめるイベントにするため、この経験は来年に活かしていきます。

夢をかなえる方法
イベントが終わった後のスコレーでは、祭を支えてくれていた人について考える話し合いをしました。
子どもたちは、それぞれの視点で、がんばってくれたいろんな人、支えてもらったことを共有しました。
大人たちの様子をよく見ていたようで、あんなこと、こんなこと、どんどん出てきます。
共有することで、「そんな人がいたんだ!」「知らんかった」と視野が広がり、さまざまな視点からイベントを振り返ることができていました。
来年は、子どもたちもこの気づきを活かして、祭りに参加してくれるでしょう。
帰る前、スコレーパークの発案者のてっちゃんが、涙を浮かべながら、今回のイベントがたくさんの方に支えてもらって実現したことを話してくれました。
「夢は叶うってことを覚えていてほしい」
一つの夢にたくさんの人の想いや力が集まったことで実現した、美しい祭りでした。
さて、日常が戻ったスコレー。
平和な日常があるからこそ、祭りがより輝きます。
当たり前の日々を大切に、それぞれの夢を実現させるために、スコレーのプロジェクトは、まだまだこれからも続きます。
目に見えるもの、手に触れるもの、その全てに感動を覚える幼少期。
自然の中での豊かな体験は、心の成長や生きる喜びにつながっていきます。
私たち人間にとって本当に必要なものは何か?
急速な時代の変化の中でも、それを見失わないように、スコレーはこれからも考えていきます。

スコレーでは随時見学を受付けています。「竹林のスコレーが気になる!」「もっと知りたい!」「実際に見てみたい!」そう思っていただけましたら、まずは見学にお越しください。